二段ベッドの兄弟損得勘定
きょうだいがいれば、多くの人が体験するのではないだろうか、という代物のひとつに二段ベッドがある。
部屋数ときょうだい数が合わない場合、部屋を分割することがまず検討される。
けれども部屋の面積は一部屋分で変わらないので、今度は空間を縦に分割してみようということになる。
そうした結果の画期的アイデアが二段ベッドである。
私が子供の頃も、もちろんお世話になったものである。
この二段ベッドというのはつくりがしっかりしていないと危ないということで、なんだか大仰な大きさになっている。
部屋の中にこいつが一台あるだけで、ものすごい存在感であることは否めない。
ということで、私たち姉妹にとっては、この二段ベッドが転じて部屋そのものとなっていた。
ちょうど寝台列車のひとりひとりに割り当てられた一スペースのように。
いかに過ごしやすく、かつ好みのインテリアにするか。
そこで手腕が問われるのである。
私は何でだか下の段だった。
本当は上がよかったが、姉という権力に屈した形になる。
ただ下の段のよいところは、上のベッドの木材部分に布を吊るして、カーテン風にできたという点だ。
その頃ちょうど天蓋付きベッドなるものに多大な憧れを抱いていたので、これは大変都合がよかった。
ぐるりを布で囲むと、どことなく異国の雰囲気が漂うのである。
その中に異国情緒とは何の関係もない漫画本を枕元に並べ、ライトスタンドを設置して夜な夜な漫画を読む。
昼間はカーテンを開け放ち、風通しをよくした上で、昼寝をしたり、おやつを食べたり(親には秘密にしていた)した。
今思い出しても、とても快適な居場所であった。
その生活もいつのまにか、姉が自分の部屋をうまいこと手に入れたことによって、二段ベッドが分解されるとともに解消してしまった。
所詮は子供の頃の一過性の、刹那的な生活であった。
けれども刹那的だったからこそ、私の記憶には強烈に残っているのである。