某キャンプに参加した思い出

昔、玩具メーカーが主催した親子キャンプというのに参加したことがある。
その玩具メーカーは、女子向けの着せ替え人形が有名で、当時はみんなが持っていたと言ってもいいくらいに一世を風靡した。
もちろん今でもあるだろうが、果たしてその人気が当時のそれに及ぶかと言われれば、おそらくは否である。

とにかくみんな大好きだった。
かくいう私もその一人、だからそのキャンプを非常に楽しみにしていた。

父親は仕事で行けなかったので、母親と姉と私の三人で行った。
着いてみると、その人形を大きくした着ぐるみが待っていた。
人間を模して小さくしたものをさらに大きくして、しかも模された側である人間がその中に入って、さらに同じく模された側である人間達をもてなす、というのは当時の私の目から見ても異様であった。
今見れば、シュールでしかも少し泣けたかもしれない。

そのキャンプが、その人形を作った玩具メーカーの主催だと感じさせるのはその着ぐるみくらいで、あとは参加した子供がめいめいにその人形を持ってきていた、ということくらいか。
だから私の記憶を辿っても、あれは終始ただのキャンプ、しかもただ親子でバンガローにとまった、という思い出しかない。
べつにその人形でみんなでおままごとしたとかいうこともなく、実に冷静なキャンプであった。

その中で一番思い出に残ったのは、おやつにもってきていたペロペロキャンディー(今ふと思ったが、変な名前だ)に、アリが行儀よく並んでたかっていたことだ。
本当にきれいに一直線に順番待ちをしているようだった。
バンガローの外から入口を通り、その行列は姉の枕元のそのキャンディまで一本の黒い線を描いていた。

私も姉も泣きながら母親に助けを求めたものだが、その後どうしたか記憶はない。
実にアウトドア、ワイルドな思い出だ。

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