思いを素直に伝えること

5月23日は、「恋文の日」だそうである。
誰か知人が、「恋文の日に入籍した」との由を言っていた気がするので妙に覚えてしまった。
知人だったろうか、芸能人であったろうか。
人間の記憶と言うのはとかく曖昧であり、改竄を得意としているのではなはだ怪しい。

それはそうと、私は恋文なんぞこの方書いたことがない。
携帯がない時代、コミュニケーションは家の電話か手紙であった。
そんな折にも私は異性に手紙を書いたことはない。

ポケベルとPHSと携帯電話というツールが台頭してくると、手紙はメールへとその立ち位置を明け渡したが、そんな時にも、私は切ないメールを異性に送ったことはない。
そもそも好きだとか、会いたいとか、そんなことは恥ずかしくて言えないのである。

万一私がかようなことを口走ったときには、大抵の場合間違いなくほろ酔いである。
もしくはほろ酔い以上である。
すると、相手の異性はからかわれているのかとか、冗談かとかそんなことを思うらしく、私との間に越えられない一線を引いてしまうらしい。

それで一体何度後悔したかしれない、もちろん酔いのさめたあくる日の話であるけれど。
翌日の後悔と言うのはしかし、どうしてあんなに絶望的なのだろうか。
翌日のカレーがとても美味しくなっているのと同じように、一晩寝かせると無駄に熟成されてしまう。
そうなったときにはもう取り返しのつかない状態にまで仕上がった後なのである。

というわけで、素直に恋文や恋のメールで、好きな気持ちを伝えるということはとても大事である。
それも素面の状態に限り。
冗談や勢いの力を借りないと伝えられない恋なんてのは、まだまだ覚悟が足りない証拠だ。

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