UFOをみた人をみた件
少し前に伊東に行ったとき、UFOをみた。
いや、正確に言わねばなるまい。
UFOをみた人をみたのだ。
その時は、大学時代の友人とゴルフをしに一泊二日で伊東へ行った。
というものの、また正確に言うと、私はゴルフになんの興味もないので、ゴルフをしに行くために伊東に行く友人にくっついて遊びに行っただけである。
私は友人がゴルフに興じている間、宿の部屋で昼寝をしたり、近くを散歩したり、本当は有名な公園が近くにあったからそこに行きたかったのだけれど、1時間以上歩いて結局たどり着かず、徒労に終わったりして時間をつぶしていた。
友人達が部屋に帰ってくると、私たちはみんなでお酒を飲んで楽しく過ごした。
それで、結局私にとっては旅行に出ても出なくても全く代わり映えのない一泊目が終わった。
次の日の予定は、朝早くまたゴルフ好き連中が少しゴルフをしにいってから、昼頃帰ってき、そこから車で小田原まで出て帰ることにしていた。
結局ゴルフ連は昼を結構すぎてから帰ってきたので、車に乗ったのが夕方になってしまった。
伊東も結構山の中に宿をとっていたので、車で山くだりをして帰る羽目になる。
うねうねまがる坂を上ったり下ったりしながら、あたりはいつの間にかまっくらになってしまっていた。
時々、山の合間にみえる街のあかりが本当にきれいで、伊豆半島の形をそのままくっきりと光の粒が形作っているのだった。
この美しい景色を見れただけでも儲けたと、一回みんなで車を停めてしばし街を眺めることにした。
赤やら白やら黄色やらの、ネオンとも家の灯とも判然としない光たち。
ため息をつきながら眺めやっていると、一人の友人が「あ、UFO」と叫んだ。
たった今まで叙情的な景観に嘆息していた我々は、突如としてSF的意識に切り替えられた。
「あ、また出た」と、今度は別の友人が叫ぶ。
彼らの見たところによると、白い光がぱっと現れたかと思うと、瞬時に離れたところにまた現れたようだ。
それを何回か繰り返しているらしく、その時の友人の半分以上がそれをみた(ちなみにその時全部で9人いた)。
彼らはすっかりその怪しげな光に満足してしまったらしく、先ほどの街の灯りに対すると同等の大きな嘆息をした。
もちろん私は見ていない。
ゴルフもしていないし、UFOもみていない。
なんなら公園にもたどり着いていないのだから、この旅行が何であったのか、今思い出しても良く分からない。
が、とりあえず私は、UFOをみた人をみた。