私のごっこ遊びについて
私は小さい頃、何とかごっこというものがこよなく好きだった。
何とかごっこと言っても、決してスーパーヒーローになりきったり、アイドルになりきったりるような幼稚なやつではない。
私が好んだのは、喫茶店ごっこや旅館ごっこ、駄菓子屋ごっこやおばけやしきごっこなどである。
本当はどこかに出かけたり旅行したり、テーマパークに行ったりしたいのだが、一人で行くお金はないし出不精だし引っ込み思案だし、ということで自分でやってしまおうと思い立ってはじめた遊びだ。
喫茶店ごっこは、家族を無理やりにお客に呼んで、ココアやらコーヒーやら、私開発のスペシャルドリンク(配合は気分次第)やらを飲ませる遊びだ(しかも金をきっちり取る)。
旅館ごっこは、当時箱根に家族で旅行した思い出が忘れられず、帰ってすぐ自宅の和室の入口に「○○の間」という紙に書いた看板をひっさげてその気になるだけという気安いもの。
ちなみにその時たまたま家に遊びに来ていた姉の友人に、このひそかなごっこ遊びを発見された上、「楽しいの?」と聞かれた屈辱を今をもって忘れない。
駄菓子屋ごっこはなかなかに秀逸で、私が本当に駄菓子屋で買いためた飛び切りの玩具や駄菓子を置いた上、あたりくじとその景品までもちゃんと用意した。
まあ、その景品の着想を得たのがガソリンスタンドの景品だったため、買ったものがトイレットペーパーやボックスティッシュだったのはいただけなかったかもしれない。
しかも家族相手の商売だったので、家族の一人がくじであてたトイレットペーパーは、結局全員でつかうことになるのでお得感も何もあったものではない。
おばけやしきごっこでは、自宅の一室のカーテンを閉め切って、電気も消して暗くした中に色々な障害物を並べておく。
そして、煎餅が入っていた一斗缶の上に友達を座らせて、その一斗缶を人力で押しながら部屋を進むと言う、今考えても何にも怖くないし、なんなら障害物にひっかるのは一斗缶を押している自分のみという踏んだりけったりの企画である。
やっぱりこう思い返してみると、私のごっこ遊びも十分幼稚なやつである。
本人はいたく楽しかったが、付き合わされた人のことを思うとやや申し訳なくもなるというものだ。