中学時代の国語の恩師
平安時代、女官が書いた雑記とも言うべき作品がある。
日本人ならば誰もが知っているだろう。
学校で1度は絶対に学ぶ作品だ。
私がこの作品について最も詳細に学んだのは中学生の頃である。
中学時代の国語の先生は50代の男性で、生徒に創作させるのが好きな人だった。
夏休みの国語の宿題も、短歌でも俳句でも詩でも小説でも、なんでも良いから作品を2点以上作ってくるというものだった。
そしてそれを片っ端からコンクールに応募するものだから、当時の生徒たちのコンクールの入賞数は凄まじかった。
私も小説がとある学生のコンクールで入賞し、いきなり学年通信に作品を掲載されて恥ずかしくて穴に入りたくなったことをよく覚えている。
そんな先生だったから、あの作品の授業でも現代語訳や解説が一通り終わると、それを真似て生徒たちにも雑記を書かせた。
私は「嫌いなもの」というタイトルで、酔っ払いなどを挙げた作品を記した。
他にも幾つか作品を記した記憶があるが、どんなものだったかは覚えていない。
しかし、とても楽しかったことは覚えている。
本当に好きなように書けるからだった。
しかも先生は誉め上手で、それがみんなのやる気に繋がった。
また、先生は普段から時々、文章を書くことに親しむためにと、400字程度の雑記を書いてくる宿題を出すことがあった。
400字という無理ではない字数と、やはり誉めてくれる先生のおかげで、さほど苦ではなかった。
当時の学校の生徒が文芸関係のコンクールで毎年多数入賞していたのは、先生が片っ端から応募してくれただけでなく、普段の授業や宿題で文章を書く力が鍛えられていたからかもしれない。
そんな彼は、小中高を通して、私にとってとてもお世話になった忘れられない先生のひとりである。